SPECTRA 3200 / Canopus
Graphic Acceralation Chip:RIVA TNT (Nv4) / nVIDIA
RAM:8ns Ultra Low Latency SGRAM 16MB(90MHz 128bit)
Port:AGP (32bit 66MHz 2x 3.3V)
動作確認マシン:PC/AT互換機(SY-6BA+、GA-6BXE、MS-6163、P3B-F)
SPECTRA 2500との差額交換で我が家にやって来た、当時のCanopusの最上位モデル。
SPECTRA 2500と同時発表の製品だが、ターゲットをゲーマーに振った2500とは異なり、汎用高速モデルに位置付けられたこの機種では描画速度の向上が最優先とされ、MoSysが生産していた特殊なウルトラ・ロー・レイテンシ仕様のSGRAMを搭載するなど、意欲的な設計が目に付く。
このULL-SGRAMは元来MoSysが生産していたMDRAM(Multibank DRAM。その名の通りメモリバンクをチップ内に複数用意して、内部的にインターリーブアクセスを実現する事で見かけ上のメモリアクセス速度を向上させるという、内部的にもパッケージ的にもかなり特殊な構造のメモリチップで、かつてTseng Labs社のET6000に採用された実績がある)のインターフェイス部を無理矢理SGRAMのインターフェイス仕様に合わせて改造した様な構造で、SGRAMとして見ればアクセスタイミング等にレイテンシ短縮に伴う癖があってやや使いこなしが難しかった様だが、MDRAM譲りの極端にローレイテンシ(つまりメモリアクセスのペナルティが少なく応答性が良い)な挙動が特徴であった。
それ故、CanopusはそのULLの部分にだけ着目してSGRAMとしてのブロックライト等の描画支援アクセス機能を無視する、つまり単にレイテンシが低い超高速反応形SDRAMとして扱う事でこのチップが本来持つ特性を最大限に引き出す設計を施していた。
当時流れた噂によれば、ULL-SGRAMは生産に手間がかかる構造であって他の需要もなく、実質的にCanopusの特注品状態であった為に価格的にも大変高価であったらしい。
だが、その判断は最終的に吉と出た。
nVIDIAが提供するNv4用リファレンスドライバがSGRAMの機能を使用しない構造であった事もあって、各社からは通常のSDRAMを使用したTNTカードが発売された中でチップの性能を限界まで引き出す極限的メモリチューニングを施されたこのカードの性能は他を圧倒するものがあった。
後継に当たるRIVA TNT2を搭載したカードが各社から登場した際、このカードは性能比較用基準カード(いわゆる旧世代代表カード。これはそれだけでもそのカードが“旧世代”製品中でも最速級であったと評価されていた事の間接的な証拠となりうる)として幾度か雑誌で取り上げられたのであるが、それら最新のカードの大半と比較しても当時の標準的環境では殆ど見劣りしない結果(場合によっては凌駕しさえした)を叩き出し、差を付けたのはほとんど当のCanopusが出した後継モデルであるSPECTRA 5400系カードだけという有様だったのであるから、これはひとえにCanopusの開発能力の高さの証明であろう。
以後、その固有機能を使用しないのに敢えてSGRAMを使用するヴィデオカードが見られる様になった(もっとも、その大半はSDRAMよりもSGRAMの方が入手が容易であった為選択していた様である)が、先陣を切ってその方向性を指し示したという点でCanopusのこの製品は重要な意味を持つ。
ちなみに、EIZO Flex Scan E57Tとのフォーカスの相性問題はこの機種でも僅かであるが発生した。
但し、ドライバの更新ごとに動作速度や信頼性のみならず画質までもが改善され、最終的には全く問題ないレベルまで到達してしまっているから、その面でもCanopus技術陣の力量の程が知れよう。
なお、オプションとしてSPECTRA Video Port 600というヴィデオ・キャプチャユニットが用意されており、これを用いればPentium II 448MHz RAM:256MB HDD:DDRS-39130Wという条件下で秒間30コマの320*240サイズ動画がほぼコマ落ち無し(但し無圧縮時)で取り込む事が出来た。
Video Port 600はBlockTreeの事実上無圧縮のみをサポートする(ソフトウェア圧縮もあるにはあるが、とても実用になる代物ではない)チップ(型番は忘れた。確かBt484だったか?)を搭載しているのだが、設計思想としてはこれをグラフィックカード上に搭載するのは悪い考えではない(オーバーレイの為にPCIバスに負荷をかけずに済むのはかなり大きな利点である)ものの、大量のデータをAGP経由で垂れ流し、更に高負荷のかかるエンコードをCPUにさせねばならないのでは本末転倒で、出来ればこのカード上に何らかのヴィデオエンコーダを搭載しておいて欲しかったところである。
それはともかく、このSPECTRA 3200そのものはそれなりに高くついたカードだが、満足度は極めて高かった。
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