SPECTRA 5400 Premium Edition / Canopus
Graphic Acceralation Chip:RIVA TNT2 Ultra (Nv5ULTRA) / nVIDIA
RAM:5ns SDRAM 32MB(183MHz 128bit)
Port:AGP (32bit 66MHz 4x 3.3V)
動作確認マシン:PC/AT互換機(EP-61BXC-A / EPoX、S1837UANG Thunderbolt)
Canopusが99年に満を持して送り出した、nVidiaのRIVA TNT2 Ultra (NvULTRA)を搭載した高速グラフィックカードで、Canopus製各種カードの基板それぞれに与えられている固有の型番ではN17-AG-904。
姉妹機種にRIVA TNT2 (Nv5)を搭載し、コアと実装SDRAMの定格動作周波数が低い事を除けば基板を含め全く共通設計のSPECTRA 5400が存在する。
RIVA TNT2 / TNT2 Ultraは、製造委託先の確保の問題で旧式の0.35ミクロンプロセスで生産せざるを得ず動作クロック周波数も当初計画値より約1割落として出荷されていた前作のRIVA TNTを0.25ミクロンプロセス向けにシュリンクして高クロック動作を可能とし、合わせてAGP x4モードへの対応や3D描画機能の充実を図ったモデル(TNT2 UltraはTNT2の高クロック選別品)である。
このカードの前作に当たるSPECTRA 3200の時には、一世代古いRIVA TNTを搭載しているにもかかわらず当時最新のRIVA TNT2を搭載する他社製カードと大差ない性能を叩き出したドライバが話題となったが、それはこの5400シリーズにも当然踏襲され、チップスペックでは1ランク上のMGA G400と対等に渡り合う性能をWindows 9x/NT用ドライバレベルで実現している。
しかも、新機能を満載したせいでドライバにやや不安定な所の目立ったMillenium G400とは異なり、TNTの正常進化版と位置付けられるTNT2系ではその命令セットの大半がTNTと共用可能なのでいわゆる「枯れた」コードが利用出来、登場時点での信頼性という点では比較にならなかった。
運用上ドライバに起因する問題が全くと言って良い程出ないのは本当は当たり前といえば当たり前の話なのだが、速度を稼ごうとするあまりチェック等の手を抜いて自滅するドライバを添付されて出荷されたカードもあった事を思うと、これは特筆に値しよう。
更に言えばBeOS等のマイナーOSのサポートに関してはG400が論外だったのに対し、TNTと共通点の多いTNT2系はBeOSでもR4.5.x以降で正式にサポートされたし、他にもnVIDIAのリファレンスドライバを使えばOS/2さえもがフォローされており、マイナーOS愛好者としては有り難い事この上ない(但し例によってCanopus自身によって供給されたのはWindows用ドライバのみである)カードであった。
また、SSH(Signal Super Highway:アナログRGB出力信号線をグラフィックチップ近くに配したフィルタ部の直後でインピーダンスや信号遅延の管理を徹底した別基板に切り替える技術。これによって、RGBコネクタを標準のD-SUB15ピンコネクタから5-BNCコネクタ構成などへ変更可能となるという副産物が発生した)及びDFS(Dual Filter System:2組のアナログフィルタを切り替える事で、CRTの特性に合ったフィルタを選択可能とする技術)という2つの新技術の導入で、これまでRIVA系の弱点であり続けてきたアナログ映像信号の品質にも手が入り、Matroxの伝統に則って「作った」美しさの目立つG400と比べても好感の持てる「自然に」美しい画が出て来る様になった。
このあたりはCanopusが前作SPECTRA 2500の画質を巡る騒動に余程懲りたかそれとも思う所があった為らしく、このカードでは相当アナログ部分を重視した回路設計が行われた様だ。
実際、これまでのCanopus製カードでは毎回どこか細かな問題が出ていたFlex Scan E57Tでも全く問題なく(というか素晴らしく理想的な状態で)画面が表示された。
ちなみにこのSPECTRAシリーズはオプションの多い製品で、前作SPECTRA 3200のオプションであったSPECTRA Video Port 600(実質無圧縮専用だが結構高画質でNTSCヴィデオ画像を取り込めるヴィデオキャプチャユニット)に加え、今回は上述の通り出力を標準のD-Sub 15pinコネクタから5BNCコネクタに変更するオプションであるSSH Type Bと、それと5BNCのモニタを繋ぐ為のBB75ケーブル、それにD-Sub 15pin RGB出力に加えてNTSC ヴィデオ出力を備えたSSH Type D/TVが加わった。
この辺を一通り買うと大方10万円仕事になってしまうが、大昔のCanopusの名作Power Window 964LBがVRAM 4MBのフルセットでやはり10万円前後していた事を考えると、まともに使えるグラフィックカードの値段というのはこれ位かかってしまうものなのかも知れない。
SPECTRA 3200ではULL-SGRAMの採用が数字に表れにくい部分での高速性能の実現に大きく寄与していたが、今回の5400系では高クロックのSDRAMとされている。
これは、MDRAM系のULL-SGRAMがその複雑な構造故に高クロック化が困難であった為と考えられ、単純な構造であるが故に順当に高クロック化を達成し続けてきたSDRAM(実際、上位機種の5400P.E.では最大で200MHz駆動の可能なSDRAMが搭載されており、それを通常183MHzで駆動しているのだが、ULL-SGRAMでは少なくともこの時点ではそれは達成不可能であった)を使用した方が、今回については正解であるという事であろう。
いずれにせよこれは非常に素晴らしいグラフィックカードであり、その価格に見合った満足が得られる製品であった事は確かである。
なお、このSPECTRAシリーズのVGA BIOSはnVIDIA製チップ搭載カードで発生しがちなAdaptec製SCSI BIOSとの競合問題を回避する為に、2番目以降に組み込まれるSCSIカード/オンボードSCSIコントローラのBIOSを無効にしてしまう仕様になっている模様で、筆者の環境ではASC-39160+AIC-7896やAHA-3940UWD+AIC-7896でこの現象が発生している。
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