IOI-A100U2W / IOI-Technology
インターフェイス:Ultra 2 Wide SCSI (68pin LVD 80MB/s)
転送モード:Bus Master
Bus:PCI Rev.2.1 (32bit 33MHz 3.3/5V)
SCSIコントローラ:INIC-1060P / Initio
対応機種:PC/AT互換機・PC-9821シリーズ(DOS ASPI非対応)
動作確認マシン/マザーボード:PC-9821Xv13/W16,MS-6163,P3B-F,S2466N-4M Tiger MPX,FW-6400GXR/150/WS,PC-9821RvII26/N20
紅い基板が印象的な、Initio初のPCI対応Ultra 2 Wide SCSIカードであるINI-A100U2WのIOI版である。
搭載チップはINIC-1060Pで、当然INIC-950系列の改良進化バージョンに当たる。
初期のUltra 2 Wide SCSI対応カードという事でご覧の通り、LVDデバイスの速度を殺さずにSEデバイスとの共存を実現する為の機能は実装されておらず、登場段階では事実上LVD動作のUltra 2 Wide SCSI対応HDD専用カードとして取り扱われていたが、もちろんSE動作専用の低速デバイスを接続しても動作する様にはなっている(当然ながらこの場合は最大でもUltra Wide相当の性能しか出ないが)。
また、搭載チップが対応していたからだと言ってしまえばそれまでだが、この時期にして既にPCIが3.3/5V両電圧対応になっており、実際に3.3V専用バス(PCI-Xスロットを含む)で動作する事が確認されている。
これは基本的にはPC/AT互換機対応の製品であるが、リテール版パッケージには”NEC PC-98 will support”という、頼もしいんだか頼りないんだかよく分からない文字が並んでおり、出荷時に書き込まれていたBIOS(Ver.1.03D)ではPC/AT互換機同様にPCIバス搭載のPC-9821でブート及びその利用が可能である。
このBIOSは今は亡きICMがINI-9100J用に開発したBIOSにルーツを持ち、多少の修正を加えてINI-9100UW及びその互換カード用として提供されたものに、IOI-Technologyが独自に手を入れてINIC-1060P対応としたものであったらしく、本家Initioを含め、当該チップを搭載したカードを販売した他社では同等品が一切提供されていない。
このPC-9821対応BIOSについては元々がICMの著作物に由来する為か権利関係でトラブルが発生したらしく現在では公開されておらず、故に玄人志向が同じINIC-1060Pを搭載するChanpon3-PCIを発売するに当たっては、“有志”が制作したとされる「98対応BIOSだけ」(つまりこのBIOSを書いた状態ではPC/AT互換機ではブート出来ない)のBIOSファイルを販売店であるOVERTOP II(閉店)のサイト上で公開するという、非常にデリケートな対応を強いられた事が知られている。
なお、本家Initioが対応版(Miles)を提供していた事から、このINIC-1060PはMac用Open Firmwareが提供されており、Flashメモリ書き換えで対応可能である。
このカードに搭載されたINIC-1060PはINIC-909/910・INIC-950(940含む)に続くInitioとしては3世代目のSCSIコントローラであるが、総じて素直な挙動を示した(それでもMO関係では色々トラブルが出たが)前作INIC-950と比べて癖が強く、一旦正しく動けばかなりの性能を発揮したものの、何故かIBMのSCSI HDD(ちなみに筆者がテストした範囲では、DNES・DDYSあたりの世代ではトラブル続出だった。IBMでも新しいIC35L018UCPR15やSeagate・Maxtor・富士通のHDDでは同様のトラブルが発生していないので、前記モデルの時代のIBM製HDD内蔵SCSIコントローラの挙動に何らかの問題があった可能性も考えられる)との相性が極端に悪く、各所で悩みの種となった。
只、Macや98でブート可能なUltra 2 Wide SCSI対応SCSIカードは希少(98についてはこれ以外ではI-O DATAのSC-U2PCI系しかなく、MacについてもPower Domain 2940U2W以外の選択肢は無いに等しい)であった事と、SC-U2PCI系より高速であった事からこのカードは特に珍重されており、現在でも中古市場で見かける事はほぼ皆無である。
もっともこのカード、搭載するINIC-1060Pの製造プロセスか設計に何らかの問題があったのか、突然死が複数報告されており、実は筆者の所蔵する分も既に機能しなくなっている(何故か一度復活した事もあったが)。
INIC-1060Pは時期によって製造工場が異なっている可能性が高い(そもそもInitioはいわゆるファブレス企業で、チップ生産は他社に委託しているのだが、INIC-1060Pに関しては製造週によってチップ表面のマーキングに用いられるフォントがバラバラで、しかも表記内容に相違が見られる事から複数の工場が製造を担当したと推測される)為、あるいは製造工場による問題の可能性も考えられるが、これから当該チップを搭載したカードをお求めの向きには、確率は低いがこの種の問題が発生し得る事にはご注意願いたい。
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