Sound BLASTER Audigy Digital Audio / Creative
接続バス:PCI Bus (32bit 33MHz 3.3/5V)
サウンドコントローラ:Audigy(CA0100-IAF) / Creative + UDA1328T / Philips + STAC9721T / Sigmatel or CT1297-TAT / Creative
IEEE1394コントローラ:TSB41AB2 / Texas Instruments
対応機種:PC/AT互換機
動作確認マザーボード:S2466N-4M Tiger MPX,S2885ANRF-T Thunder K8W,S2895A2NRF Thunder K8WE
2001年夏に発売開始された、Creative傘下のE-mu Systemsの手になるAudigy(CA0100-IAF)チップを搭載するPCIサウンド/IEEE1394インタフェイスカード。
AudigyチップはEmu10K2という開発コードを持つDSPコアを搭載する一連のサウンドコントローラシリーズの一番手で、そのコアの開発コードが示す通り、1998年夏にSound BLASTER Live!に搭載されてデビューを飾ったEmu10K1の改良/後継モデルで、3年間の技術の進歩やその間Sound BLASTER Live!に寄せられた苦情や要望を反映して、大幅な改良が加えられている。
ハードウェアスペックとしては、対応量子化ビット数/サンプリングレートへの24bitモード及び96KHzモードの追加(注1)、チップ内で同時再生可能なチャネル数の倍増(注2)、内蔵デジタルミキサの完全32bit処理化(注3)、サンプリングレートコンバータの大幅改良(注4)、そしてCreativeがSB1394と呼ぶIEEE1394インターフェイスのリンク層コントローラの内蔵(注5)と非常に多岐にわたって各機能の改良・拡張・追加が実施されており、Emu10k1で、つまりSound BLASTER Live!で問題とされた部分の大半が解決している事が判る。
この製品は、Creativeがリテール販売用として最初に用意した3モデル(注6)の内の最下位に当たり、基本となるAudigyカード本体(注7)に、Optical/Coaxial両対応のデジタル入出力モジュール(CT4800)と、これに対応した4接点の専用ミニジャック端子の他にライン入力2(ステレオミニジャック)、Cambridge SoundworksのDesktop Theater Play Worksシリーズに対応する9ピンミニDINの専用デジタル端子、それに4ピンミニDIN端子によるMIDI入出力端子(注8)を搭載する光デジタルインターフェイスカード(CT4770)(注9)をセットしたパッケージである。
もっとも、最下位とは言っても機能的には同じカードで、入出力端子の数も実は殆ど差が無く(注10)、価格差の大半はバンドルされているソフトの相違(注11)に依るもので、必ずしも機能的な最下位を意味するものではない事には注意されたい。
CT4770や4800という型番でお気付きの方もおられようが、これらのデジタルインターフェイスカード&入出力モジュールは、Sound BLASTER Live! PRO(注12)以来延々とLive!シリーズに同梱され続けた製品で、Live!/Audigyの38ピン拡張端子のピンアサインが共通である事と、これらが(ADCを除き)サンプリングレートに依存しない設計である事が知れる。
Audigyカードそのものについては、Live!までのCreative製サウンドカードのほぼ全てに搭載されてきたD-SUB15ピンのJOYSTICK/MIDI端子がカード本体の背面ブラケットから排除され、代わりにSB1394(IEEE-1394)端子がそこに搭載されている(注13)のが目を引くが、JOYSTICK/MIDI端子そのものは、ピンヘッダの形でカード上に存続し、添付の専用ブラケットからケーブルをこの端子に接続する事で、旧来のDOSアプリケーションその他からこの端子に接続する各機器が利用可能となっている。
この辺のDOS資産を重視する設計(注14)は、DOS環境でのサウンドカードのデファクトスタンダードの座にあったCreativeならではのもので、同社が如何にDOSユーザーを(少なくとも形だけでも)大切にして来たかが知れよう。
これは今となっては盲腸の様なモノなのだが、PC-9800シリーズのユーザーが未だにDOSゲームのプレイの為だけにPC-9801-86ボードに執着するのと同様、向こうのコアなDOSゲーマー(注15)には欠かせない仕様なのだろう。
総じて言えば、このAudigyのカード本体のハードウェアは、Sound BLASTER Live!の正常進化モデルとして考えると申し分ないレベルに到達しており、音質的にもこの価格帯では充分以上の出来(注16)である。
だが、誠に遺憾ながらその良く出来た設計のハードウェアを制御/駆動するCreative純正ドライバ/ユーティリティの方の出来は相変わらず絶望的で、カタログスペックの豪華さ(注17)の一方でその動作に色々難があって、特にDirect Soundアクセラレーション機能の実装については、2002年夏の時点での公式ドライバではこれが有効だと幾つかのFM音源/レトロPCエミュレータのサウンド出力が動作しない、という特に日本の特殊な趣味を持つユーザー達(笑)にとっては致命的なトラブルが発生する事が確認されている。
察するにDirect Sound及びこれを包含する実装形態をとるEAX Advanced HDの動作及び互換性検証について充分な検討や確認が行われなかったものと考えられるが、仮にもサウンドカードメーカー最大手を自他共に認める程の大会社の、それも主力商品となるべきサウンドカードでのこの有様はどの様に解釈すべきであろうか?
この点についてはCreativeには特に迅速な対応を望みたい。
もっとも、幸か不幸か現在kX Projectという有志の手によって作成された、Emu10k1/10k2両対応の非常に優秀な非公式WDM/ASIOドライバ(注18)が公開・配布されており、こちらをインストールして使う分には前述のトラブルは発生しない(注19)。
メーカー保証対象外で幾つか制限事項があり、更には未だ開発途上だがかなり筋の良いドライバなので、その辺の問題を特に気にしないという心の広いAudigy/Live!ユーザー諸氏には、こちらのドライバを強くお薦めしておく。
それにしてもCreativeのソフトウェア開発能力の低さは、本当にどうにかならないものなのだろうか。
(注1):Philipsの24bit 96KHz 6ch出力対応DACであるUDA1328Tによって6chアナログ出力を実現している。これに対し、アナログ入力はADCがAC'97 Codecに依存する為に48KHz 24bitモードに固定されており、また、Windowsの標準サウンド環境(MME)ではOS側の仕様でこれらの両モードが共に非対応、つまり16bit 48KHz上限となっている。
(注2):32ch→64ch。各チャネルのサンプリングレートは前作同様に独立設定可能で、最終的にミキサ前段のサンプリングレートコンバータで変換されて揃えられる。
(注3):カタログには何気なくさらっと書かれているが、これは実は非常に重要な事実を示唆する。つまり、Emu10k1の内蔵デジタルミキサには32bit以下の量子化ビット数で処理する部分が存在したという事である。なお、このチップで扱われるPCMデータの最大量子化ビット数は24bitなので、32bitだと差し引き8bitがマージンやフェーダーの処理などに割り当て可能となる。
(注4):どうやら内部処理で用いられるサンプリングレートがAC'97の標準からは逸脱するが48KHzから96KHzにクロックアップされたか、SPDIF出力の周波数に同期して可変する様に変更されたものらしく、SPDIF出力が48KHz固定から44.1/48/96KHzの3周波数対応(Audio HQと呼ばれるユーティリティで設定)に変更された他、コンバート後の出力の音質が劇的な程に向上している。
(注5):呼称はともかく実体はOHCI準拠のスタンダードなもので、上記の通りTIの物理層コントローラと組み合わせて動作する。
(注6):当初はPlatinum ex(\38,800)、Platinum(\29,800)、それにDigital Audio(\18,800)の3モデルがラインナップされ、カードのみのモデルは後日バルクで追加発売されるまで存在しなかった。
(注7):型番はSB0090。このカード本体は3モデルで共通となっている。
(注8):一般的な5ピン標準DIN端子に変換する専用ケーブル2本が付属する。
(注9):実際にはかなり多機能で、相棒となるCT4800の仕様からも判る通り、デジタル入出力も光端子専用という訳ではない。このカードの名称は初代Live!に同梱されていたデジタルインターフェイスカードが同軸出力専用であったのと区別する為に命名されたものであった。
(注10):デジタル端子に限れば寧ろ上位2機種の方が少ない位である。但し、上位2機種にはヘッドフォン端子があり、専用リモコンも同梱されているので、使途によっては利便性にかなり差が付く。
(注11):上位程お買い得感の強い大物ソフト(但しCreative向けの専用版)が付いてくる。
(注12):Live!シリーズのリテール版パッケージとしては2代目のグループの最上位機種。
(注13):これによってブラケット部の各端子の間隔に余裕が生じ、レイアウト的にも無理の無い配置が実現している。
(注14):当然DOS用ドライバやユーティリティもドライバCDに収録されている。
(注15):無論、本当にコアな連中はGUS(Gravis Ultra Sound Max/Ace)使いたさに、それと非PnPなSound BLASTER系サウンドカードを2枚挿ししたりしたレガシィな仕様のゲーム/メガデモ専用マシンを残していると思うが・・・。
(注16):但し、その事は必ずしも“オーディオ機器として充分”なレベルに達しているという事を意味するものでは無い。そもそも、筆者はカード単体で高々1万円強の製品のアナログ出力で“オーディオクオリティ”の音が出ると信じる程人間が正直には出来ていない。そういう意味では当サイトの各コンテンツのサウンド・オーディオ関連の記述については行間を読む努力をしていただきたい。
(注17):5.1ch出力を念頭に置いて設計されたEAX Advanced HDと呼ばれる強力なサウンドエフェクタを内蔵し、更にDolby Digitalソフトウェアデコーダや高機能なソフトシンセまで搭載する。
(注18):元々はCreativeがLinuxのドライバ作成用に開示した技術情報を逆に利用して作成されたものらしい。但しライセンスの関係でソフトウェアDolby Digital デコーダなどは未実装となっている。
(注19):少なくとも、筆者が日常使用しているシステム上でインストールして確認した範囲では、問題のエミュレータ関連の動作を含めて不具合は確認されていない。
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