Auzen X-Fi Forte 7.1 / Auzentech


接続バス:PCI-Express 1.1 (x1)

サウンドコントローラ:X-Fi Xtreme Fidelity (CA20K2-2AG HF) / Creative + CS4382-ACQZ / CIRRUS LOGIC + AK4396VF / 旭化成エレクトロニクス + WM8775SEDS / Wolfson + WM8782S / Wolfson

対応機種:PC/AT互換機

動作確認マザーボード:S2915A2NRF Thunder n6650W


 日本市場では2009年9月に発売開始された、Auzentech製X-Fiチップ搭載PCI Express対応サウンドカードのLow Profile対応モデル。基板上の形式表記はAZPS-LM28X R1.0。

 日本におけるAuzentechからのX-Fiチップ搭載サウンドカードの発売は、2008年6月にAuzen X-Fi Home Theater 7.1(注1)が公表されて以降、販売チャネルをめぐる紆余曲折もあってか遅れに遅れ、当初の発表から実に1年3ヶ月を経て、漸く実現したものである。

 このカードは、機能的にはCreativeから供給される第2世代X-Fiチップ(CA20K2)と64MBのDDR-SDRAM(X-RAM(注2))、それにAudigy 2シリーズ以来のCIRRUS LOGIC製CS4382(7.1ch DAC)と Wolfson製WM8775(ADC)を搭載する、チップ構成が本家CreativeのSound BLASTER X-Fi Titanium Professional Audioとほぼ同等の製品である。ただし、カードデザインが本家で提供されていないLow Profile対応となっており、またヘッドフォン出力専用DACとして192kHz 24bit出力対応の旭化成エレクトロニクス製AK4396を、フロントパネルのマイク入力用ADCとしてWM8782Sをそれぞれ別途搭載して音質改善対策を施している。

 イメージ的には、Sound BLASTER X-Fi Xtream GamerをPCI Express対応にしてX-RAM搭載としたものと考えればわかりやすいが、実態としては姉妹機種でありHDMI1.3a経由でのデジタルサウンド出力に対応するAuzen X-Fi HomeTheater HDのHDMI関連回路部分を取り払ったもの(注3)、と言った方が正しいだろう。

 基板設計に注目すると、伝統的に搭載ケミコン(キャパシタ)を全て廉価な85℃品とする悪癖のある本家製品と異なり、アナログ段の最も重要な部分にニチコン製の高価かつ特性の優れた製品(Muse ES(注4))を奢り、フロント2ch分のオペアンプを交換可能(注5)とし、本家で基板全体を覆っていたシールドをあえて装着しない(注6)など、正攻法で音質改善に取り組んでいることが見て取れる。

 ちなみにこのカード、入出力端子はカードのブラケット部にSPDIF出力(注7)、ヘッドフォン出力(注8)、それにアナログ入出力ブレイクアウト(注9)の3つを備え、内部にはSPDIF入力とフロントアクセス用のX-Fi I/Oドライブを接続するのに必要な端子(注10)をフル搭載している。

 なお、ソフトウェア的には本家のものをほぼそのまま供給されているらしく、第二世代X-Fiチップでのトピックである、Dolby Digital LiveおよびDTS Interactiveと称するマルチチャネル音声出力を1つのデジタルストリーム信号にエンコードしてSPDIF出力経由で出力する機能などもそのまま実装されている。

 音質的には、搭載DACが共通であることも手伝って本家の初代X-Fiシリーズの延長線上にあるが、ブレイクアウトケーブル経由であるというハンデがあるにもかかわらず、これまで筆者が使用してきたSound BLASTER X-Fi Digital Audioなどと比較して明らかに音の表現力が改善されているように思える。

 また、セールスポイントの一つであるヘッドフォン出力も良好で、DIGI96/8 PSTなどとは比べるべくもない(注11)ものの、この価格帯のカードとしては値段分以上の音質・音圧が実現されているとして良いだろう。


 (注1):紆余曲折を経てAuzen X-Fi HomeTheater HDとして製品化された。

 (注2):サムソン製K4H511638D-UCCCを1枚実装する。このチップはDDR266・333・400に対応する512Mbit(64MB)品であるが、本製品での動作クロックが何MHzなのかは定かではない。なお、Creative・Auzentechではこれをマーケティング上の理由でX-RAMと呼称し、ゲームでの3D音響処理などの際にキャッシュとして利用されるようだが、正直なところその実装によるメリットは現状でほぼ皆無である。

 (注3):実際にもHDMI周辺を除く基板レイアウトは酷似しており、DACやADCなどの部品もほぼ同一構成である。同一の基本設計によるバリエーション展開と見るのが妥当だろう。

 (注4):ニチコンの「オーディオ微少信号回路用両極性品」を謳うカテゴリ温度上限85℃のアルミニウム電解キャパシタ。クリアグリーンのスリーブに覆われ、「MUSE BP」と表記されているため製品名がMUSE BPと誤解されるケースもあるが、この「BP」は両極性品(Bi-Polarized)を示す略記号である。なお、これは8chのラインアンプ部に合計8本実装されており、その他は韓国SAMYOUNG ELECTRONICS製の85℃品が実装されている。

 (注5):フロント2chには標準でDIPパッケージのNational Semiconductor製LME49720を搭載する。

 (注6):Creative側はノイズ対策のためと称してシールドを上位機種で装着しているのだが、実のところデリケートなアナログ増幅段とノイズをまき散らすデジタル部を一緒くたにして一つのシールド内に閉じこめたのでは却って逆効果で、実際にもシールドのない下位モデルの方が素直で良好な出力特性であることが報告されている。その点ではアナログ部だけにシールドを装着した玄人志向のENVY24HT-HG8PCIの考え方が正しく、きっちりアナログ部の設計で対策を施せばシールドはいっそ装着しない方がマシだとするこのAuzentechの設計方針もまた正しい。

 (注7):一見ただの同軸出力だが、ステレオミニプラグ形のTOS Linkケーブルを突き刺して光出力を行うことも可能な設計で、動作中はこの光出力の光源が発光しているのが確認できる。ちなみに本家のSound BLASTER X-Fi Titanium Professional AudioなどではTOS Linkの入出力端子をブラケット部に搭載しており、SPDIF入力がカードのブラケット部経由で行えないことはこの製品の数少ない弱点の一つである。ただし、2ピンSPDIF入力端子は上述の通り基板上に実装されているので、このカードにSPDIF信号の入力を行うこと自体は可能である。

 (注8):ステレオミニプラグ端子を使用する。なお、前述の通りこの端子のためにAK4396が専用DACとして奢られており、増幅段も専用とすることでインピーダンスが600Ωのヘッドフォン(AKG K240系など)にも対応する。

 (注9):例によってアナログVGA用のD-SUB 15ピンコネクタを流用し、7.1ch出力とステレオライン入力・マイク入力の合計12チャネルの接続に対応する。なお、このマイク入力端子は基板上のジャンパ設定により、モノラルバランス入力と、ステレオアンバランス入力とを切り替え可能になっている。

 (注10):高密度タイプの12ピンDID_EXTコネクタ(デジタルI/O)と9ピンAND_EXT(アナログI/O)コネクタよりなる。また、その間に標準の9ピンHDオーディオ端子(フロントパネル用)も搭載している。このあたりの仕様でも明らかだが、この製品は本家CreativeのX-Fi I/Oドライブがそのまま装着できる。なお、アメリカのAuzentechサイトではI/Oドライブの通販が行われているが、日本では実施されていない。

 (注11):そもそも実売で3倍以上の製品と比べる方が間違っている。ただし、そのあたりとの比較をしてみたくなる程度には良好である(聞くに堪えないレベルなら、そもそも引き合いにすら出さない)とも言える。


フレーム再表示 インデックス

一応、当ページの内容の無断転載等を禁止します