CZ-8RL1
(X1/turboシリーズ用データレコーダ)

 X1シリーズユーザー待望、おなじみフルロジックコントロールの データレコーダです。X1シリーズとしてのデータレコーダはこの1機種だけでしたね。

 初代X1(マニアタイプ)がFDD搭載ではなくテープモデルであったことから、市販ソフトの媒体がテープ中心になるというのは仕方のないことだったのですが、それゆえに初のFDD搭載モデルであるX1Dのユーザーには悲劇が訪れることになってしまいました。

 そもそも、最初のFDD内蔵モデルとして3インチフロッピーを採用したパソコンですから媒体自体が一般的ではありません。さらにX1シリーズ用FDDユニットも当時は高価でしたから、メディアのサイズを問わずFD版の市販ソフトの数が増えにくい傾向にありました。

 そしてX1DのCMT I/Fが、他のメーカー製で一般的な、というか普通のカセットレコーダを接続するために使われるPLAY/REC/REMOTEの3つの入出力のコードを使用するタイプになっていたのです。カタログにはシャープ純正のデータレコーダとして、ポケコン用として発売されていたCE-152があてがわれました。当然フルロジックコントロールに必要な信号が不足していますから、自動的にロードするとか、巻き戻すとか、複雑な操作はユーザーに頼らないといけません。

 しかしソフトハウスはですね、X1のCMTの利点を最大限に活用したソフトを開発するのですよ…。

 あの「ゼビウス」のソフトテープです。turboが発売される少し前のリリースなので、対応機種にはそれ以前のものがずらりと並んでいるのですが…だったらX1用とだけ書けばいいのに? いやいや、よく見ると「D」だけ書かれてないのですよ。

 X1用テープ版ゼビウスは、面に関するデータが本体プログラムとは分離されてロードされるようになっていて、ゲームが進むと一時的に中断して新たな面データをロードすることがあるのです。ゲームオーバーになれば、巻き戻して次のチャレンジに備えることも自動で行われます。

 こういった、X1ならではの機能を使ったソフトはユーザーに「X1を買って良かった」と思わせたりもするのですが、しかし広告やパッケージには「X1Dを除く」という無情の注意書きがあったりして、X1Dユーザーは悲嘆に暮れる日々を送らざるを得なかったのです。せっかく高いお金を出して買ったのに、何がプロフェッショナルタイプだ、と…。

 X1turboとそれ以降の時代は、テープモデルを廉価版とし代わってFDモデルを標準に据えるようになったのですが、だからといってX1Dと同じCMT I/Fを採用するわけにはいかないとされたのか、ついに外付けでフルロジックコントロール仕様のデータレコーダが発売されることになったのです。

 そして別にX1Dのためというわけでもないんでしょうが、CZ-8RL1はフルロジックコントロールではなくマニュアル操作モードが備わっており、APSSによる選曲機能も可能な高品質・高機能なデータレコーダとして使用できるようになっています。

 操作部です。上半分にテープカウンターとパワーインジケータと特殊機能ボタン、下半分におなじみのテープ操作ボタンがあります。

 特殊機能ボタンは、上から「EDIT」「MONITOR」「APSS」と並んでいて、MONITORのみオルタネイト型(押してON、もう一度押してOFF)、その他がモーメンタリ型(押してる間だけON)のボタンになっています。

 EDITというのは、録音時に押している間入力がカットされて無音部分が確実に作れるというものです。ラジカセではMUTEとかいってましたかね(多分。マニュアルがないのでここは推測)。

 MONITORは内蔵するモニタースピーカーから音を出すかどうかというもので、まぁSAVEされた音って聞くとうるさいですから、いつもはオフにして必要な時だけ確認に使うということになるでしょうかね。

 APSSは頭出し機能モード起動ボタン。一度これを押してREWかFFを押すとその方向に次の曲間を探し出してくれます。

 操作ボタンはラジカセでいうところのフェザータッチになってます(というかタクトスイッチですよね)。STOP以外のボタンにLEDが仕込まれていて、動作中には点灯するようになっています。APSSボタンを押した時はREWとFFのLEDが同時に速く点滅して指示を促し、APSS動作に入るとゆっくり点滅して探し中であることを示します。

 SAVEボタンはSAVEと書いてあるところは動かなくて、赤い部分だけが押せます。このボタンひとつだけで録音状態になります(LOADとの同時押しはしない)ので、誤操作防止用にひとまわり小さいボタンになっているものと思われます。
 X1/X1C然り、MZ-80B/2000/MZ-1T02然り、電磁メカカセットデッキだと電源が入っていない時はいかなる操作も受け付けないのが当たり前でした。うっかり自分のテープをデッキに入れたまま友人宅のパソコンの電源を落としてしまい、大慌てした経験がある人もわりといそうですよね?

 CZ-8RL1では、電磁メカ制御によるイジェクトに加えて、機械式のイジェクトもできるようにされています。マニュアル操作モードであってもイジェクトは電磁メカ制御なのですが(ボタンをちょっと押しただけで扉が開く)、電源オフ状態でも深くボタンを押し込めばイジェクトできるのです。

 この自動でも電源オフ時に手動でもイジェクトできるというのは、MZ-2500でも実現されていましたね。もっともあちらは「留守録スタンバイ中にイジェクトしたい」とかいう目的だったんじゃないかと思いますが。

 こちらが背面。ケーブルの接続先や設定関連がまとめられています。

 ミニジャックが左からCMT OUT(EAR)とCMT IN(MIC)、その間にある超ミニジャックのREMOTE。これらは他のデータレコーダにもある、普通の音声端子ですね。括弧書きでEARとかMICとか書いてあるのは、家庭用テープレコーダーを接続するよう書かれたパソコンのマニュアルの記述に沿うようにという配慮なんでしょう。

 ボタンが3つ並んでいまして、左からPHASE、BAUD、MODEとあります。PHASEは再生時の信号波形の位相のことで、特にシャープPWM方式は信号のL→Hの変化を捉えてビットの値を読み取りますので、これが逆位相で記録されているとLOADできなくなってしまうんですよね。シャープのパソコンではあまり例がありませんが、私が知人から譲ってもらったコンパチ基板のMZ-80Cでは記録環境の問題か逆位相でSAVEされておりました。そのデータを活用するため、CZ-8RL1に活躍してもらいました。

 BAUDはボーレートのことで、高速(HIGH)か低速(LOW)に合わせた特性の切り替えができます。何が高速で何が低速なのか判然としませんが、多分1200ボーは低速で、2000ボーとかそれ以上だと高速でいいんでしょう。大は小を兼ねると言いますか、高速なボーレートに対応できるなら低速のにも大丈夫そうな気がしますけど、実は高速対応によって急峻な信号の動きをそのまま伝える回路が、ノイズさえもそのまま伝えるがためにエラーの原因になり得るという話がありまして…低速対応はフィルタによってノイズを低減させているのだろうと思われます。

 MODEは前面パネルのボタン操作を受け付けるか(MANUAL)、X1からの制御でのみ動作するか(COMPUTER)の設定です。前述のとおり、コンピュータ側にしてもイジェクトはできます。

 MONITOR VOLは内蔵するスピーカーの音量。もちろんそのスピーカーからは前面のMONITORボタンを押し込んである状態でないと音が出ませんが、CMT OUT出力の音量とも連動していますので、アナログ接続する場合はちゃんとした調整が必要です。

 そして右端のCOMPUTER CONTROLはX1からのケーブルを接続する端子で、丸DIN7ピンになっています。RGBが6ピン、TVコントロールが8ピンと一応誤接続防止を意識していそうな気はしますが…。



 高さや前面下部切り欠きなど、実はデザインをX1turboに寄せてあります。ミリ単位ではさすがに違いがありますけれど、並べると横一線に整うようにしてあるのです。

 その後X1Dは3インチFDの切り捨てにより不遇まっしぐらのマシンとなり…それさえなければ漢字ROM内蔵のX1Dkなんてのが登場するとかあったかもしれませんが…公式の救済など何もされることなく忘れ去られてしまったのですが、忘れたのはメーカーだけで当然ユーザーはそんなことあるはずもなく(自分の部屋に鎮座してたりしますからね)。

 そこでユーザー自身によりいくつかの救済策が雑誌で発表されるようになりました。CMTについては次の二例があるようです。

 いずれにしても並大抵の改造ではありませんが…シャープのサービス窓口でサブCPUを発注できたかはわかりません。AX286Nのゴム足とか購入したことはあるのでかなり細かい部品でも売ってくれた窓口であることは確かだったんですが…。そんなわけで、Oh!MZの改造の方がややハードルが低いということだったようですね。





 これがOh!MZ方式のI/F。製作と記事は祝一平氏です。「動けばよいのです」の言葉通り、すごい配線です…テストクリップで一部の信号を接続したりと、安定性という意味で心配になってしまう出来栄えですが…。

 なお接続するだけならもうちょっと簡単になるとのこと。CZ-8RL1のボタンも使えるようにしたので複雑になってしまったのだそうです。

 なおこの改造により、Oh!MZではCMTのフル機能が使えるようになったX1Dを「X1DX」と呼ぶようになりました。


 いつの頃からかしばらく使わないでいたらやたら回転が渋く(というか全然回らなく)なり、数十分〜数時間かけてトレーニングすることでようやく使える状態になったりとかしてたんですが、いいかげんそれも疲れてきて、それどころかいくらトレーニングしても回ってくれないので、意を決して駆動部分のメンテナンスを行いました。

 手順やポイントはX1センターの「CZ-8RL1カセットデッキの修理メモ」を見て下さい。カットワッシャーを外すのが大変だった…ゴム部分の劣化はたいして感じなかった(割れたりしてなかった)ので今回はそのままです。ゴムパッキンも調達したんだけど必要なかった…。


CZ-8RL1S
(X1-CAI用ランダムアクセスカセットレコーダ)

 昔、mixiのX1コミュニティにて、X1G model30にデータレコーダを接続したんだけどうまくいかない旨の質問(トピック)が書き込まれました。実はそのデータレコーダとはCZ-8RL1ではなく「CZ-8RL1S」といって、CZ型番のシャープ製品でありながらX1では使えないというものでした。

 縁あってその質問者からCZ-8RL1Sを引き継ぎました。シャープでは型番にSというサフィックスが付くのは、元となった製品に対する機能追加か改造品である印。はたしてこの「S」は何を意味するのか…?



 見た目はCZ-8RL1と同じ。流用しているのだからフォルムも当然同じになりますよね。

 ただ、フタにあった「X1 SERIES」というロゴは消えていますし、なによりシャープロゴの下にある文言が「RANDOM ACCESS CASSETTE RECORDER」に変わっています。


 操作ボタン類も若干変化しています。カウンターの右の3つのボタン、EDIT 1/EDIT 2/EDIT 3と全て(?)REC MUTEになっており、ロック式のボタンではなくなっています。

 その他は同じかな…パワーインジケータが緑色になってますね。


 実はCZ-8RL1Sにはスピーカーが内蔵されていません(側面にスピーカーの穴は開けてあるのに)。その代わりなのか、逆の側面にPHONEミニジャックがあります。

 背面はもっと違いがあります。

 コネクタの種類と配置に変化があります。

 EAR端子がLINEに変わって、その入出力がRCAピンジャックにて設けられています。ピンジャック自体はビデオ用のモノラルタイプの流用ですね。REMOTEとMICの端子はそのままか。

 その右は丸DIN8ピンの「COMPUTER CONTROL」端子。RS-232C仕様だという話ですし、端子数も違いますので、X1用のCMTケーブルは使えません(物理的に差し込めるけど、信号は合わない)。

 その右は2つに減ってしまった設定スイッチ。しかし何をするものかは謎…。FORMATのON/OFF、MODEのEDIT/NORMALとはなんのことなんでしょうか…。

 右端はHEADPHONE VOL.とありますので、側面に出ていたPHONEジャックの出力調整ツマミですね。

 CZ-8RL1Sの特殊性を伺えるポイント。ヘッドがいわゆる「LL仕様」なんですね。

 ライン入出力が1本ずつであることからモノラル音声のみが扱えるカセットレコーダであると考えられるのですが、録再ヘッド(右)はステレオ用ですし、消去ヘッド(左)もギャップがずれててステレオのチャンネル単位で消せるようになっています。

 おそらくこれはMZ-2500用に使われるような、本来はステレオ用の左右チャンネルのうち片方にアナログ音声が、もう片方にインデックス信号が記録されていて、そのインデックス信号を頼りにランダムアクセスするのではないかと思われます。

 ちなみに、カセットテープではステレオ用であっても、どうせ消去するのなら左右チャンネルの両方とも不要になるので、普通のカセットレコーダの消去ヘッドはモノラルになっています。ですが特殊用途の場合はその限りではありません。その特殊用途とは「MTR」と「LL」です。

 MTRについては勝手に調べて頂くとして、LLについてちょっと説明しておきましょう。
 LLとはLanguage Laboratory(一部ではLarning Laboratoryとも)の頭文字で、カセットテープを有効に使って効果的に英語など言語を学ぶシステムのことです。普通はそれを用いた教育法を導入している場所として「LL教室」という呼び方をしていますね。

 LL教室で使うテープは、ステレオの左右チャンネルのうち片方をガイド音声、もう片方がブランクになっています。ガイド音声を聞き、それを真似て録音しながら自分も発音してみれば、後でどう違うのか聞き比べることができますし、会話の片方をガイド音声が担えば定型文ではありますが会話練習にも使えます。専用のテープレコーダは、学習モードだとどれだけ録音してもガイド音声は消えないようになっています。つまり片チャンネルだけ自由に消せるようにするために、消去ヘッドが左右チャンネルそれぞれ独立して作用するようにできているのです。

 コンピュータとの接続がRS-232Cであるならば、X1でなくても容易に接続できるんじゃないかな…というわけで解析を…しようと思ってますがそのままになってる…。入手した時に中をさらっと見てみたのですが、そこでわかったことというのが

というぐらいのことで…。できるかどうかはわかりませんが、マイコンの内蔵ROMを読み出すことができればボーレートやプロトコルが判明するかもしれないのですが…まずマイコンの端子のピッチがシュリンクというところから引っかかっているという…。

 パイオニアにX68000PROをOEM供給したこともありますし、CZ型番ではあってもX1用ではないCRTディスプレイを出荷したりしてますから、このCZ-8RL1Sも何か特別な使い途があったんでしょう。でも長い間それが何なのかわからなかったんです。

 X1-CAIの記事を書いた後、Oh!MZ誌をいろいろ眺めていたら1986年8月号の新製品情報コーナーに、そのX1-CAIが取り上げられていたのを発見しました。そしてその記事の最後の方に、中学生用のシステムに備えられた周辺機器としてCZ-8RL1Sの名前があったのです。

 なるほど! X1-CAI用でしたか。いや、RS-232C制御ということであればMZ-CAIのうちMZ-2800を使ったバージョンでも使われた可能性はありますね。

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