PBC-20H
(MZ-80B/80B2/2000/2200用プリンタバッファ)

 その昔、印刷というものはパソコンにとって大仕事でした。プリンタを制御する信号を監視しながら、準備が整ったと見るや1バイト送信し、また準備が整うまで監視し…そしてそれにかかりっきりになったパソコンは終わるまで解放されず、人間は印刷が終わるまでひたすら待たされていたわけです。今のパソコンではバックグラウンドで自動的に印刷されるようになっていますから、印刷中でも別の作業ができるのですけど、そういう仕組みがまだ一般的ではなかった時代の話です。

 そこを何とかしようと考案されたのがプリンタバッファです。プリンタの代わりに印刷データをパソコンから受け取り、プリンタに対してはプリンタの速度でゆっくりデータを送って印刷します。パソコンからは超高速のプリンタが接続されているように見えるだけですから、どんなソフトからも使えて互換性云々の問題はありません。そして本物のプリンタよりずっと短い時間で印刷作業から解放されるので、すぐ次の作業に移れます。マイコン工業の「でぶ」他いくつもの周辺機器メーカーが参入して、WindowsなどのマルチタスクOSが一般的になるまで一つのカテゴリとして市場に存在感を放っていました。無線LANやNASで有名な「バッファロー」もプリンタバッファでパソコン事業に参入した会社で、今の社名は元々バッファ製品のブランド名でした。

 ここで紹介するプリンタバッファは、MZ用周辺機器を多く開発・販売していたテレシステムズのボードです。MZ-80B/2000ではプリンタI/Fがオプションだったので、純正のものと交換して使用するようになっていました。
 プリンタバッファはデータを預かって以降本体とは独立して能動的にプリンタと通信する必要がありますが、その制御のため別途マイコンを搭載するのが一般的でした。このボードでも、天地逆のテレシステムズのシールが貼られたワンチップマイコンが搭載されていますね。マイコンでほとんどの処理を賄うのか、バッファメモリを合わせても純正I/Fと部品の数は変わらないように思えます。

 しかしこの写真、天地を基板に合わせるかシールに合わせるかちょっと悩んでしまったくらい、シールが目立ってるな…。
 バッファメモリ。MB8265(64k×1bit)が8つですので、64KBですね。
 左下にテレシステムズのシールが見えますが、これはROMの誤消去防止用遮光シールで、つまりマイコンチップは紫外線ランプ式のROMイレーサで消していたということです。昔なら当たり前でしたが、今ではほとんど見かけなくなってしまいましたね。
 コネクタは純正と同じ、D-Sub25ピンなのでそれまでのケーブルがそのまま使えます。
 両脇のスイッチのせいなのか、ブラケット板がついていませんね…。そのスイッチは、右の押しボタンがリセット、左のスライドがI/F方式の選択です。ちょうどMZ方式とセントロ方式の切り替わりの時期でしたからね…。
 パッケージです。説明書いらずというか、箱に十分な説明が書いてありますね。そして、なんとここに水谷たけ子の絵が! おそらくシャープが取り持って実現したのでしょうが、マニュアル以外でお目にかかれるとは…。

 普通のプリンタバッファが外付けというか独立した製品で、むしろプリンタのそばに置いて使うのに対して、この製品はI/Fそのものを置き換えるだけにスマートにまとまっていたのが特徴と言えるでしょうか。プリンタI/Fがオプションだったケガの功名というような気もします。
 その後MZ-15002500では割り込みを使ったプリンタスプーラが提供されるようになりこういったプリンタバッファは提供されなくなりました。どうしても欲しければ外付けのを買えばいいわけで…いや、結構高価だったけど…。

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