MZ-1F07
(フロッピーディスクドライブ)

 ハーフハイト、というか後の5インチドライブ(CD-ROMとか含む)の標準サイズとなった大きさの、5インチFDDです。シンプルなデザインですね。元々MZ-3500のオプションである拡張FDDのMZ-1F02に、フロッピーI/Fボードを組み合わせたのがMZ-1F07ということになります。これで158000円というのは安くなかったですが、それでも従来品であるMZ-80BFの298000円よりはずっと安くなって喜んだものです。
 といっても私もなかなか買うことができなかったのですが、ある時日本橋のOAシステムプラザに(確か新古品扱いだったと思うのですが)5万円で並んでいたのを思い切って買いました。買ってMZ-2000に取り付けて、とりあえずS-OSを動かそうとFORMAT&SYSGENを動かしてもうまくフォーマットできない…。思わず店に電話。いや、本当はFORMAT&SYSGENってのは論理フォーマットユーティリティであって、物理フォーマットはBASICでやらないといけなかったんですけどね。
 背面はこんな感じ。縦に長いのがケーブルの接続口で、上が本体側、下が増設側です。その左の黒いのは電源。
 横面にはドライブ番号の変更スイッチがあります。1台目にも2台目にも使えるというわけです。

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MZ-1E05
(MZ-80B/B2/2000/2200/700/800/1500用フロッピーI/Fボード)

 MZ-1F07に付属していたフロッピーI/Fボードです。この付属していたほうを使っていた人が多いので正式な型番はあまり有名でありませんが、一部カタログにこの型番で記述されていました。

 使用しているFDCはMB8876で、なぜかデータバスが負論理のものを使っています(正論理のものがMB8877)。この選定意図が謎なのですが、多分こういう理由だと思います。

 MZ-80Bの開発では、フロッピーの容量も倍密度、つまり2Dとするよう検討が進められていました。ですが従来品のMZ-80FIOで使われていたFDC、東芝・T3444Mは単密度専用のため引き続いては使用できません。そこで新たなFDCを探すことになったのですが、それまで懇意にしていた富士通からはウェスタン・デジタルのFD1791のセカンドソース品であるMB8866を紹介され、結果的にこれを採用することで決定します。

 このFD1791というかMB8866、負論理バス仕様になっています。そしてFD1791には正論理バス品がなかったためか、富士通のセカンドソース品としても正論理バス品は用意されませんでした。シャープとしては決定後はもう選択の余地なく負論理バス品を使うことになったのですが、ここでうっかり正論理バス品と同様の使い方の回路としてI/Fを完成させてしまいます。いやもしかしたら「うっかり」ではなく、仕様書のビットの意味が反転することも承知の上で反転バッファを使わなかったのかもしれません。他メーカーのディスクを読み書きするとかを想定しなければディスクに記録されるビットの極性がどうなっていても構いませんし、仕様書の論理と逆でも全部逆なんですから読み方の問題と捉えられなくもありません。

 MB8866を使用したボードはMZ-8BFIとして発売されました。続いて開発されたMZ-80AFIでもMB8866が採用されました。その次のI/FがMZ-1E05なのですが、ここではMB8876Aが採用されました。この違いは、セカンドソース元であるウェスタン・デジタルがFD1791の改良品としてFD1791-01とFD1791-02を世に出したのに追随して、富士通がそれぞれに対応するMB8876A・MB8877Aを新たなセカンドソース品として発売し、MB8866を終息または新規設計非推奨品としたからだと思われます。MZ-8BFIの代替品としての役割もありましたから、当然負論理バス品が選択されました。

 一方X1の方は設計時に既に正論理バス品がありましたので、素直にMB8877Aを採用しました。おそらくMZ-80B開発時にMB8877Aがあれば、そちらを採用していた可能性はかなりあると思います。あるいは、使い方を誤らなければ…。

 そもそも、最初のFD1791が負論理バス仕様だったこと自体が不思議ではあるのですけどね。この理由がわかれば、本当にMZ-8BFIでの回路が間違いだったのかどうかもわかるかもしれません。

 当初はMZ-2000/2200用で発売されましたが、後にMZ-700/1500にも使われるようになりました。そのせいもあって、元々のMZ-2000用とされたMZ-8BFIの幅広基板ではなく、通常サイズで設計されています。ただMZ-8BFIの使用も考慮してMZ-2000/2200のスロットはそのように幅が広げられています。おかげで、取り付けのときガタガタしてやりにくい…。
 で、MZ-700には本体にフロッピーをブートする機能がなかった(正確にはFコマンドでブートROMに制御を移すことはできたが、ブートROMはなかった)ので、それを増設するためのソケットがここにあるわけです。MZ-1E05(を付属するMZ-1F07)の発表が1983年7月、MZ-700のディスク対応の発表が1984年4月ですから、MZ-700のDISK BASIC発売計画はかなり前から進められていたということになるのでしょうか。

 さて、MZ-700にフロッピードライブがサポートされるという記事が掲載されたOh!MZ・1984年5月号ですが、そこにブートROMを搭載したMZ-1E05の写真も掲載されています。でもよく見ると、私が持っているボードと部品の配置が違います。ROMが装着されるソケットの位置をはじめとして、多くの部品が少しずつずれて実装されているのです。記事のROMのラベルが製品とは違っていたこともあり試作レベルのものだったと思うのですが、だとすると古いモデルということなのでしょうか?ネットにアップされている写真自体数が少ないですが、どれを見ても私が持ってるものと同じですね…。
 たまにヤフオクなどで見かけることもあり、MZのFDD環境を充実させるためにも長いこと物色していたのですが、ようやく入手できましたので比較してみたいと思います。

 これが「古い」と考えられているボード。端っこにスタンプされている数字がシリアル番号なら、これは357ということになりますが果たしてどうだか。
 もうひとつ製造時期を推測する材料が使用されている部品のコード。MB8876Aの下の数字「8321」が1983年第21週(5月)製造を指しますので、少なくともそれ以前のものではないことになります。
 こちらは今MZ-80Bに装着しているボードで、シリアル番号と思われる数字は659。MB8876Aのコードは8439(1984年9月)ですね。なるほど新しいです。  こちらはMZ-1500で使用中のボード。写真では見えにくいですがシリアル番号と思われる数字はぞろ目の555。MZ8876Aのコードは…8319(1983年5月)?!上のボードよりも古いんですけど…。
 倉庫に保管されているものが、古いのから順に使われていくとは限りませんので、こういうことが起こりうるわけです。
 こちらはMZ-700で使用しているボードで、ROMソケットにブートROMが装着されています。シリアル番号と思われる数字は557…もしシリアルなら左のとほぼ同じタイミングで製造されたものだということになりますよね。入手した経緯は全然違うのに…。
 MB8876Aのコードは8438なので1984年9月。とすると左端のと近いってことにもなりますが…?

 基板を見ただけでは、何の理由があってこれだけの設計変更をしたのかわかりません。シャープでは少なくとも当時、基板に並べた順番に部品番号をふり直すというようなことをしていたみたいなので、「部品番号単位で見比べて、差異のあるのが変更箇所」などという考え方はできません。VFO周辺の部品配置が大きく異なることから、1個だけ食い込むように配置されているTTL ICを移動してアナログ部をすっきりさせたのが変更のポイントと思われるのですが、そうすると古いタイプはアナログ的な特性があまり良くなかったということになりますよね…。

 左が「古い」と思しき基板、右が「新しい」らしい基板の裏面です。部品配置が違う、という以上の顕著な違いは発見できませんね。基板上端のコネクタとライトアングル金具の部分で、「新しい」方は信号のGNDを金具ごと半田付けしているのもノイズ対策ということなんでしょうか。

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