MZ-1R23
MZ-1R24

(MZ-1500用漢字ROM/辞書ROMボード)



 なんと過ぎたるオプション…MZ-1500には専用の漢字ROMと、さらには辞書ROMがあったのです。それがここで紹介するMZ-1R23とMZ-1R24。そりゃまぁね、低価格機でも日本語表示するための漢字ROMは、安くなってきたこともあってこの時代にはそろそろ常識みたいになってたかと思いますが、辞書ROMまでサポートしますか普通?!

 なおこの二つのボードは重ねて二階建てにして使用しますので、左の写真のように部品が見えない一種独特の外観となっています。

 結論から言ってしまえば、この漢字ROMボードってそんなに売れたとは思えないのですよね。漢字ROMを使用するソフト自体が少なくて、ゲームとかで表示するにしてもどうせ特定の文字列しか表示しないのであれば文字パターンではなく絵のデータとして持っておけばいいわけで、よほど大量の日本語文字列を表示するか、さもなくば何を表示する必要があるか特定できない場合でないと漢字ROMの必要性は薄いでしょう。

 ましてや、辞書ROMに至ってはBASICでもサポートされず、唯一「ユーカラJJ」(東海クリエイト)というワープロソフトだけという状況では果たして誰が買うというのか…。

 スロットに入るのですから、MZ-2000/2200用漢字カラーDISK BASICでサポートしてくれれば面白かったかもしれませんね。あちらは漢字ROMボード・MZ-1R13に搭載されているカナ漢字変換ROMを使用しますので、その表示と入力ルーチンをごっそり入れ替えられるようになっていればユーザーの持っているボードが複数種類あるとしても対応できるわけですし。



 ではそれぞれのボードを個別に見ていきましょう。まずは漢字ROMボード・MZ-1R23から。

 カードエッジコネクタの反対側(左)を見るとカードプラがありますね。8bit系MZシリーズのボードとしては珍しいんじゃないでしょうか? PC-9801用ボードみたいにテコで外せるようにはなってなくて、ただ手前に引っ張るだけなんですがないよりはマシ、というところでしょうか。

 大きな未実装のLSIがありますが、これは27128とシルクされています。もちろん何の目的で設けられているものかさっぱり不明です。

 肝心の漢字ROMは左端の方にあるQFPのLSIですね。




 裏返すともう二つ、漢字ROMが現れます。


 基板のシルクにはHN61256とありますが、チップのシルクにはSC61256とあります。HNは日立っぽい型番ですが、SCはシャープっぽい型番…多分自社生産じゃなくて、オリジナルのシルクを刻印してもらっているのではないかと。

 61256という型番、そして4つ使われているということから、これひとつで32KBの容量があると考えて良いでしょう。

 基板の写真、よくよく見ると…なんか色が濃いというか黒っぽいですね? これは多層基板(多分四層)になっていて、信号の配線は表裏の表面に、電源は内層にあるのだと思います。この基板の雰囲気は、従来からのよりはMZ-5500MZ-6500なんかの情報部門が作ってるパソコンの雰囲気に近い気がするんですよね。



 こちらは辞書ROM・MZ-1R24です。いくつかノイズ対策用コンデンサがある他は、漢字ROMと同じQFPのLSIが八つあるだけのシンプルな基板です。もちろん品種も同じでHN61256、ひとつ32KBですから合計256KBですね。

 独自に解析して作成した回路図を置いておきます。クリックすると元のサイズでご覧になれます。

 そう言えば、MZ-1500の新製品発表はMZ-6500と同時だったのでした。本格的に設計が部品事業部から情報部門に移ってて、X1Ckと揃って漢字ROMをサポートするという全社的な方向性が明らかになったのでしたね。ワープロ「書院」で培った辞書ROMをMZ-6500が標準搭載するのと同時にMZ-1500でも使えるようにする、というのもその一環だったのでしょう。一方X1turboになっても辞書をROMサポートすることがなかったのは対照的です。そのために「LEXICON」「WORD POWER」とかいう「辞書のコンテンツ化」とも言うべき商品が出たのは特筆モノではありますが、変換が遅いとか文節変換できなかったってのはちょっと悲しかったですね…。

 どんなに便利でも使えるソフトがひとつでは高すぎるオプションなので、シャープが予想した以上に売れなかったようで…オプション類が叩き売られた状況でもMZ-1R23はもうないのにMZ-1R24だけが大量に残っていて、アイビットなんかでは処置に困ったんではないでしょうかね。せめて辞書ROMのデータ構造が公開されていれば応用もできたんですが…。

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