PC-1252H

 PC-1250/1251の実行専用機です。この存在を初めて知ったいきさつを忘れてしまったのですが、型番が妙に中途半端で、実在するのか誰かの妄想かよくわからなかったように思った気がします。比較的最近になっていくつかの国内外のサイトにて写真付で紹介されるようになってからは疑いようもないんですが。
 このシリーズの実行専用機にはPC-1252/1252H/1253/1253Hの4種類があったようですが、それぞれの違いはあまりよくわかりません。とりあえずH付は10.2KB、なしは4.2KBというRAM容量だったということぐらいでしょうか。このPC-1252Hでは9612バイトのフリーエリアがあるようです(PC-1251は3468バイト)。
 これは例によってオークションで入手したのですが、どこかで使っていたものを大量に仕入れたのか、10台くらいをいっぺんに出品したり、20台まとめて出品(落札者は20台まとめてゲット^^;)したりしてました(出品していたのは個人ではなく企業です)。たいへんですねぇ。
 実行専用機自体の考え方がメーカーから出たものかユーザーニーズから出たものかは定かではありませんが、高度なアルゴリズムを記述しやすいBASICを搭載し、それが仕様としてもまともだったために、ポケコンを保険外交員や営業などに持たせてツールとして活用するという考え方が比較的早く生まれたことは容易に想像できます。PC-1200のようなプログラム電卓の制御構造がちょっと強力になったぐらいのものではムリな話です。カシオでも、使い慣れると手放せないと言われるFX-602Pの路線をあっさり捨ててBASICを搭載したFX-702Pに鞍替えしたぐらいですしね。ただ、おそらく当初想定していたユーザー層(科学技術計算を多用する人)から広がって保険やら不動産やらいろいろな用途に使われるようになったのはメーカーにしても意外だったかもしれません。
 で、ポケコンを特定用途に使うのはいいんですが、使わないキーが多いとかポケコンと電卓の差という問題があって、コンピュータ慣れしていない人にはちょっと使いにくいという苦情があったのかもしれません。そこで中身はほとんどそのままなんだけど、より電卓に近づいてプログラムを実行するだけの「高機能電卓」として実行専用機を設計しようということになったのでしょう。以後PC-1270PC-1365/KPC-1285PC-1605Kと元にしたバリエーションに合わせてさまざまな実行専用機が作られました。PC-Eシリーズになってからは原型機の筐体デザインを引き継がないPC-V220、PC-V510、PC-V550、PC-V950というのが出ています。ロトくじの予想機とか、そういうのによく使われているようですね(まず当たらないようですし、データ更新と称して有料アップデートしないと使い続けられない仕組みになってるらしいです。ほとんど詐欺ですな)。
 上がPC-1252H、下がPC-1250。基本的なデザインはそのままで、キーの数をぐっと減らしているのがわかると思います。電源スイッチも、PC-1252HではモードがなくなりON/OFFのみとなりました。
PC-1251H
PC-1252H
 カナと英小文字表示。PC-1253のマニュアルを入手して、方法が判明しました。上の開発機での表示が、実行専用機では下のように表示されるわけです。かなりムリヤリ感が漂いますが…

PC-1252Hの使い方

 あちこちで調べても、あまり実行専用機の情報がありませんのでここに載せておこうと思います。といっても私も詳しいマニュアルを手に入れたわけではありませんので、どちらかというと解析結果の公開というものに近かったりするんですがね。

電卓機能

 電源を入れると、よくある10桁電卓として使用するモードになります。メモリー機能もあります。メモリーに何か値が入っていると、液晶右上にMマークが点灯します。
 プログラムを止めても、電卓モードに戻ります。

内蔵プログラム実行機能

 A〜DとJ〜Mとあるキーが計8つあります。これがプログラム実行キーです。実はこれはPC-1250とかでいうところのDEF+英字キーと同じ働きをするようになっています。DEF+英字キーというのは、例えば

10:"A" CLEAR

などとプログラムが書かれていたとき、RUNモードにおいてDEF,Aの順に押すと"A"と書かれたラベルの場所から実行する機能です。カシオのポケコンでは10個のプログラム領域があって、それぞれを独立したプログラムとして扱うようになっていますが、シャープのポケコンではプログラム領域はひとつです。そこで、複数のプログラムを一本にまとめる代わりにそれらを行番号で管理しなくてもいいようにラベルジャンプできるようにしてあるわけです。ちなみに、ラベルは複数文字や予約語もOKです(文字列なんだから予約語が含まれたって関係ないでしょ、と思うなかれ。ポケコンはプログラムが入力されると予約語については中間コードに変換するけれども、その後は予約語を一文字として扱うのだ。つまり、例えばエラー処理ルーチンのラベルに普通に"ERROR"と書くより、一度予約語として認識させてからダブルクォーテーションでくくるほうが4バイト節約できるというわけ。ちゃんと表示もできるから、少ないメモリをできるだけ有効に使うためによく使わせていただきました、この技)。

プログラムの入出力について

 キーボードの左下にあるINとOUTの丸い穴は、リセットボタンのようにボールペンのように先の細いもので押し込むことで機能させることができる、テープへの入出力ボタンです。つまりは、CLOADとCSAVEがそれぞれひと押しで実行できるということですね。
 プログラムはもちろんPC-1252Hで作成することは不可能ですから、PC-1250/1251で作成したものを転送する必要があります。私が試したのはCE-125を用いテープを経由して転送しましたが、EA-128Cというケーブルを使うとポケコンどうしで直接転送が可能です。私も昔は似たようなケーブルを使ってPC-1251とPC-1250との間でデータをやりとりしていたものです…。

 ちなみに、CAキーは事実上BREAKキーと同じ働きをします(プログラムを停止し電卓モードに戻る、節電機能でOFFになった時のONボタンになる)。

その他のキー

 ENTERキーは普通どおりデータ入力用のキーですが、実行専用機で最も特徴的なのはYESとNOのキーでしょう。これはそのまま入力されるわけではありませんが、INKEY$なんかではちゃんと識別できますので、ユーザーに判断を促したいときなどに有効に利用できます。

プログラムの注意点

 主に操作上の違いから、次の点に注意してプログラムを作成するようにする必要があります。

キー コード キー コード キー コード
A 65 0 48 ÷ 47
B 66 1 49 × 42
C 67 2 50 - 45
D 68 3 51 + 43
J 74 4 52 CL 82
K 75 5 53 CE 83
L 76 6 54 91
M 77 7 55 = 61
YES 79 8 56 CM 84
NO 78 9 57 RM 85
ENTER 80 . 46 M- 86
    % 81 M+ 87

 あとは、ハード的にもほぼPC-1250/1251と同じなので、例えばグラフィックなんかも表示できます。キーマトリクスまでは調べてませんが…。

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