MZ-1U01
(MZ-2000用拡張I/Oユニット)

 MZ-2000はGRAM(MZ-1R01MZ-1R02)と16bitボード(MZ-1M01)以外を増設する際、この拡張I/Oユニットを後ろから取り付けて使用します。MZ-80B系列用の拡張ボードが4枚入るようになっています。

 写真では左上にGPIB I/Fボード(MZ-8BIO4)、右上にQD I/Fボード(MZ-1E18)、左下にプリンタI/Fボード(MZ-1E08)、右下にフロッピーI/Fボード(MZ-1E05)がそれぞれ入っています。



 MZ本体に取り付けると、MZ-1U01は半分後ろに出っ張った状態で固定されます。上の写真で、ちょうど半分のところに線が入ったような汚れや、色合いが違う(実際には反射の具合が違う)ように見えたりしてますが、これが出っ張りの境目というわけです。


 MZ-1U01には電源が内蔵されていて、本体とは独立してI/Oボードに電力を供給しています。I/Oボードのコネクタにある電源端子は5Vのみですので、この電源も5V出力仕様です。ただ電源の入力は100Vとコネクタ(右に見える白い部分)こそ家庭用のとは違いますが、電気的にはほぼ独立しています。

 拡張I/Oユニットに電源が内蔵されている理由として考えられるのは、I/Oボードに必要な電源を分離することでMZ-2000本体の電源容量を縮小でき、コストダウンが狙えるということです。逆にMZ-80Bは、拡張I/Oポートを取り付けなくてもI/Oボード用の電源が本体にあるので、過剰な供給能力が宝の持ち腐れになっていると言うこともできます。

 拡張ユニット用の100Vは下の写真にあるように本体内のコネクタに差し込んで使用します。ここではMZ-1M01を搭載しているので、本体のコネクタにはMZ-1M01専用電源のコード(青い2本線)がつながっていて、MZ-1U01はそれと数珠つなぎになるようMZ-1M01専用電源のコネクタにつなぎます。

 本体のメイン基板とMZ-1U01は、本体基板のカードエッジコネクタに緑のコネクタが刺さっていくように接続されます。本体から不意に電源供給されないよう、ここの端子にはGND以外の電源はありません。


 私がMZ-1U01を入手したのはMZ-2000を入手してから少し時間が経過してからでした。それまではMZ-2200付属の拡張I/Oユニットを代わりに使っていました。MZ-2200ではI/O用電源も本体から供給するよう変更されましたので、ここには電源が搭載されていません。

 これは当時友人が「使えそうなら使ってみて」と譲ってくれたものでして、横の寸法が足りなくてMZ-2000の開口部と比べると余りができてしまうのですけど、信号部分については申し分なく、とりあえず接続が可能でした。

 あとは松下製の5V1A電源を日本橋で買ってきて、下の写真に見える黒いコードに接続することで、MZ-1U01の内蔵電源の代わりとしました。当時はMZ-1U01の仕様がわからなかったので、1000円と安かったこともあって、適当に1Aのものを選んだんですよね。

 最初はこれでプリンタとかオリジナル8255ボードとか動かせていたんですが、QDドライブ(MZ-1F11)が手に入ってI/Fボード(MZ-1E18)経由で接続するとQDが動かないことが発覚…。

 何が悪いのかいろいろ調べていくうちに、プリンタI/Fなんかを外すと動くことを発見したのです。QDは拡張ユニットの電源でモーターを回しますし、もうちょっとのところで電力不足に陥ってたんでしょうね。後にMZ-1U01が入手できるまで、挿入ボードの数を減らして無理やり使っていました。

MZ-2000の拡張I/Oユニットの謎をとく

 なぜ、MZ-2000用の拡張I/Oユニットはあんな形をしているのか。
 なぜ、MZ-80Bより収容可能なスロット数が2つも減っているのか。

 MZ-80Bからの改良・発展モデルであるMZ-2000。であるにも関わらず、当時から私はI/Oスロットについてだけはスペックダウンしたような印象を持っていました。なぜこんなダサいことになってしまったのか、理解に苦しんでいたのです…。

 MZ-2000だけを見ていても、ある程度は解釈可能でした。拡張I/Oユニットを半内蔵式にすれば、本体の容積を減らすことができます。拡張が不要な人には小さく・安くできるメリットが生まれます。
 MZ-80Bでは拡張GRAM(MZ-8BGK)を拡張スロットに入れることになっていましたが、MZ-2000では全て本体内でGRAMの拡張を行うためそれが不要になりました。6スロット中予約スロットが3つもあったならば、2スロット減っても自由に使えるスロットが2つ残っていれば支障はないと思うのも無理はないでしょう。

 しかしこれまで得られた知見や考察を元にすれば、MZ-2000がなぜこうなったのか、別の答えが見えてきます。なるべくしてなった、その理由とは…。

MZ-80Aのパーツを多数流用している

 マイコン少年だった当時の自分には知る由もありませんでしたが、MZ-2000の前に輸出専用だったMZ-80Aがあり、デザインを変更する動機はMZ-80Aの設計時に既に存在していたということを認識する必要があります。

 この写真の左側のように、拡張I/Oユニットを半内蔵式とするのはMZ-80Aが最初でした。MZ-80AをベースにMZ-80K2Eに仕様を近づけたMZ-1200でも、右側のように背面のパネルや狭いところに押し込まれたラベルとツマミ・スイッチに面影を残しています。

 MZ-80Aは系統的にはMZ-80K系のアーキテクチャなのですが、専用の拡張I/OユニットであるMZ-80AEUはMZ-80B系のサイズの拡張ボードを使用することになっています。プリンタI/Fボードに至ってはMZ-80B用のMZ-8BP5Iがそのままオプション指定されました。

 ということは、「MZ-80Bでは6スロットあったのに4スロットに減ってしまった」ことを残念がるのはMZ-80Aにも言えるはずです。MZ-80I/Oでさえ5スロットありましたから、それと比べても減っているわけですしね。

 スロットを減らしたかった最大の理由はデザインだろうと推測しています。MZ-80Aで6スロット分の厚さにした拡張I/Oユニットを装着するなら、背面のリセットスイッチとボリュームツマミ類が並んでいる箇所、他にもラベルや外部CRTコネクタ(製品では塞がれましたが)なんかもありますが、それらを全部どこかに移動しなければなりません。使い勝手、取り付け可能な位置、筐体の強度、もろもろ検討した上で「もし6スロットも必要なければこれが一番綺麗にまとまる」と決定したものだったのではないでしょうか。

 MZ-80Bの6スロットの意味を改めて考えてみます。6スロットのうち、一番下のスロットはフロッピーI/FボードとプリンタI/Fボードの専用スロットということになっていました。それはボードの大きさが他のボードと違ったからですね。それぞれの幅の基板に対応したガイドレールが準備されていました。

 専用スロットは他の用途に転用できない・最初からないものと割り切れば、MZ-80Bは4枚分の拡張スロットを備えたパソコンであると考えることができます。難しいですか? MZ-1500のRAMファイル用スロットも拡張スロットと同じコネクタと信号が用意されていますが、だからといってMZ-1500の拡張スロットを2スロットと言いませんよね。それと同じと考えましょう。
 とすると、2スロット減らすことが許容される要件として「汎用スロットが4つ確保されること」というものが導き出せます。厳密にはその4スロットにフロッピーとプリンタのI/Fボードを装着するのですから同じにはならないんですが、高価な周辺機器を買わないユーザーもいると考えれば、そういう人にとっては4スロットがまるまるフリーで使えるわけですからね。

 それを踏まえてMZ-80AEUを見てみると、スロットカバーはどれも同じサイズのボードを挿入する前提で設計されていることがわかります。実際には左下のスロットはプリンタI/F用の狭サイズのボードを入れるためのパーツが取り付けられているのですが、容易に取り外し可能です。

 この構造を成立させるためにはフロッピーI/Fボードも標準サイズになっている必要がありますが、専用のI/FであるMZ-80AFIはしっかりサイズがシュリンクされており、要件を満たします(写真では左上のスロットに入っている)。

 MZ-2000は、おそらくコストダウンのため、MZ-80Aの資産を最大限利用しつつ、構造を改良したものだと思われます。流用したのはシャーシ下部分、筐体後部、キーボード、拡張I/Oユニット。構造の改良はキーボード支え部分、CRT固定方法など。特にCRTの固定位置の変更は、筐体の分割構成を変更し、金型製作のコストを下げたのではないでしょうか。

 そして、MZ-2000にMZ-80Aの要素を最大限流用するということは、MZ-80A設計時の要件をも受け継ぐということになるので、MZ-80Aで割り切った箇所はそのままMZ-2000でも無条件に割り切ったことになっているのです。

汎用4スロット構成に失敗している

 MZ-2000にて、MZ-80Aと同様に拡張スロットについて割り切るためには、MZ-80A同様どのスロットも同じ標準サイズのボードを挿入できるようになっていなければなりません。



 MZ-80Aの場合と少し違うのは、MZ-2000ではプリンタのI/F仕様をセントロニクス準拠方式に変更しようと考えたため、MZ-8BP5Iをそのまま流用せず、新たに設計したことです。それがこの写真の左側、MZ-1E04です。見ての通り、標準サイズの拡張ボードとして設計されています。





 フロッピーI/FボードもMZ-1E05として標準サイズのボードとして企画されました(MZ-80AFIは特殊仕様なのでMZ-80B系列には使用できない)。これでMZ-2000用の拡張I/Oユニットは電源仕様のみが異なる、MZ-80AEUと同じものになると思われたのですが…。

 理由は不明ですが、おそらくMZ-1E05の開発に問題が生じて、MZ-2000の発売に間に合わなくなってしまったのでしょう。フロッピーI/FボードにMZ-8BFIを引き続き使うことになってしまったため、拡張I/Oユニットの下段スロットをMZ-80Bと同じ仕様にしなくてはならなくなりました。とすると、見た目はスロット最上段を削除したMZ-80Bという使い勝手になってしまったのです。

 これがおそらくMZ-2000の拡張スロットがあのようになってしまった理由だと思います。かなり断定調に書いていますが、MZ-1E04のあの形状が許される理由がこれしかないと思うのです。

 もっとも、身も蓋もないことを言えば、4スロットのうち2つがフロッピーとプリンタのI/Fボードで埋まり、残りにQD I/Fなんか入れてしまうとあとひとつしか余らないのは少なすぎますよね。MZ-2500ではあらゆるI/Fコネクタが標準装備された上で汎用2スロットだったように、必須と思われる拡張ボードで占有されない保証があってこそのスロット数削減ならまだしも、本体価格削減のためにオプション化したものが装着されたら拡張性が失われてしまうのは辛すぎます…。

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